2024.07.02
本研究は因果関係推論に有用なメンデルランダム化を用いて炎症性腸疾患 (IBD)発症に関わる代謝物質 (メタボローム)を同定した論文です。
当施設が所有する約4000人のIBD患者と約2000人の健常者の遺伝データと、東北メディカルメガバンクが所有する約8000人のメタボロームに関する遺伝データを利用して、メンデルランダム化解析を行いました。
その結果、コーヒーや果物に多く含まれるカフェ酸が潰瘍性大腸炎 (UC)の発症に保護的に働く事が示されました。近年の症例対照研究において、コーヒーを日常的に飲むことがUC発症を抑制する事も報告されており、臨床データの裏付けにもなる興味深い結果と考えられました。その他にも、トリプトファンがクローン病 (CD)の発症に保護的に働く事が示され、この点もこれまでの基礎研究データと一致する結果でした。
本研究により、カフェ酸やトリプトファンがIBD発症予防や治療につながる可能性が示唆され、今後の臨床応用が期待されます。(内藤、大坂)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38944808/
Genetically Predicted Higher Levels of Caffeic Acid Are Protective Against Ulcerative Colitis: A Comprehensive Metabolome Analysis
Inflamm Bowel Dis. 2024 Jun 29:izae143
PMID: 38944808